デカが来て、その手にあるものを離せ、と言う。

いや、どうせなら天使にしよう。

もとい
天使が現れ、その手にあるものを渡せ、と言う。
「もう、お離しなさい」と優しく言う。
「あなたは十分、守り抜きました」と語りかける。

私も、もうこれ以上、持てぬと右手を開く。

石コロでした、ただの薄汚れた石コロ。
拾った時はあんなに輝いていたのに。

その石は魔の石。
持っていたら、心は荒んでいくばかり。
海の底でしか生きられぬ、と天使は言う。

私の手から転がり落ち、石は天使に海に投げられる。

また何年も、何十年、何百年と荒海にもまれ、石は旅をする。
心を持たぬため、人々の悲しみは永遠に理解できぬまま。
心を持たぬまま、何年も何年も、海を漂う。

いつか、愛する人に拾われることを石は夢みる。

けれど、何百年も前に同じ天使に海に投げられたことを、石は覚えていない。

そして、夢みる。 夢を見る。



      


             

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